詩、詞、画...諸々

若三つ(わかみっつ)第一話「女」

「何をしている!?」
警官である男が詰め寄った。
何かを、つぶやいているが、返事は、ない。
女が縄の前に立っていた。

 

彼は、両肩をつかみ、こちらを向かせた。
顔を見て、彼は、驚いた。
知っている女だったからだ。
数か月前、地主である男に囲われていたところを助け出し、
はれて自由の身となり、幸せに暮らしているはずだった。

 

「おい!」
再び、声を張り上げた。
それでも、返事はない。
その代わり、何をつぶやいているか判った。

 

「旦那様」
女は繰り返しつぶやき、両目は遠くを見ていた。
彼は理解に苦しんだ。

なぜ憎んでいたはずの男を呼んでいるのかに。

 

「しっかりしろ!」
激しく揺さぶったが、同じ事だった。

 

彼は、女を警察で保護すると、身元の確認を任された。
女は手記を持っていた。

彼は、それを読んでいく事にした。

芥子壺のTwitter: https://twitter.com/mad_logic_009